奇妙な、しかし無視できない輝きを感じる論文が落ちていた――。

奇妙な、しかし無視できない輝きを感じる論文が落ちていた――。
全284ページ。
タイトルは、『障がいのある人の創作活動の指標に関する研究』。
最初は、ずいぶん真面目そうな論文だなと思った。
けれど、ページをめくるうちに、こちらの「普通」がじわじわ揺さぶられていく。
支援とは何か。
創作とは何か。
そして、私たちは何を見て「問題」と呼んでいるのか。
その中に、ひときわ引っかかる記述があった。
一見すると創作とは思えない行為。
ときには「行動問題」と見なされるような行為すら、表現として捉え直す視点があるという。 design0233.pdf
それは本当に、止めるべき行為なのか。
それともまだ、こちら側がその意味を見つけられていないだけなのか。
空想工房研究室。
今回の観測対象は――
「それ、本当に問題行動? 表現かもしれない。」
異例だが観測結果を先に報告す。
【 研究記録 No.007 観測結果 】
奇妙な行為は、奇妙なままでいいのかもしれない。
あの世界的超有名作品、**『ジョジョの奇妙な冒険』**でさえ、奇妙な冒険へ立ち向かうのだ。
ならば我々も、奇妙さを恐れている場合ではない。
続け、戦士たちよ。
わたしのしかばねを超えてゆけ。
――キリッ。
研究記録 No.007
今回観測した論文
村谷つかさ
『障がいのある人の創作活動の指標に関する研究』
九州大学に提出された、博士(芸術工学)の課程博士論文。
障がいのある人の創作活動を、作品の美術的・経済的価値だけではなく、創作過程、本人と支援者の関係、そして社会との関係から捉えようとした研究です。 design0233.pdf 全284ページ。
それ、本当に「問題行動」?
――表現かもしれない。
全284ページ。
タイトルは、『障がいのある人の創作活動の指標に関する研究』。
最初は、ずいぶん真面目そうな論文だなと思った。
けれどページをめくるうちに、こちら側の「普通」が、じわじわと揺さぶられていく。
支援とは何か。
創作とは何か。
そして私たちは、何を見て「問題」と呼んでいるのか。
その中に、ひときわ引っかかる記述があった。
一見すると創作とは思えない行為。
ときには「行動問題」と捉えられるような行為すら、表現として捉え直す視点があるという。 design0233.pdf
それは本当に、止めるべき行為なのか。
それともまだ、こちら側がその意味を見つけられていないだけなのか。
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観測1
「正しい使い方」から外れたところに、表現があるかもしれない
論文では、素材や道具の使い方についても興味深い考え方が紹介されている。
絵具の溶き方。
筆の使い方。
紙の選択。
それらを支援者が指示せず、本人独自の方法を尊重するという実践だ。
一般的な使い方と違っていても、本人なりの使い方があるなら、そちらを重視する。
さらに、通常なら否定されてしまいそうな行為についても、それを本人独自の表現や仕事として捉え直す視点が示されている。 design0233.pdf
つまり、
「正しく使わせる」ことが先ではない。
その行為にどんな意味があるのか。
まず見る。
教える前に、観測する。
この順番は、案外とても重要なのかもしれない。

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観測2
「創作に見えない」ものほど、見落とされやすい
論文では、創作行為なのかどうかさえ分からないような行為について、支援者が関心を持つことの重要性が語られている。
そして、
「価値を見出す」
「面白いと言える」
人が支援者側にいることが大切だという意見も紹介されている。 design0233.pdf
ここが面白い。
表現というものは、
「はい、これは作品です」
という顔をして現れるとは限らない。
こちら側が意味を理解できない。
見慣れない。
一般的な創作の型に当てはまらない。
だからといって、
そこに何もないとは限らない。
誰かが気づかなければ、その行為はただの「困ったこと」として片づけられてしまうかもしれない。
けれど、見る角度を少し変えた瞬間、
そこに独自の表現が立ち上がってくる可能性がある。
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観測3
支援者の「善意」が、本人の表現を削ることもある
この論文では、支援者が本人の創作へ与える影響についても繰り返し検討されている。
実際の現場では、
作品を早く完成させるために支援者が筆を入れたり、
支援者自身が「ここまで塗れたから完成」と判断して制作を終わらせたりすることがあったという。
そして、支援する側が活動の目的を捉えられていなければ、
「絵を描かせる」
「作品にする」
こと自体が目的となり、創作活動が形骸化する可能性があると指摘されている。 design0233.pdf
難しいのは、そこに悪意があるとは限らないことだ。
むしろ、
「きれいにしてあげたい」
「完成させてあげたい」
「もっと良くしてあげたい」
という善意から始まることもある。
けれど、その「良い」は誰の基準なのだろう。
支援者なのか。
美術なのか。
社会なのか。
それとも本人なのか。
ここで一度、立ち止まる必要がある。
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仮説
問い直すべきは、行為ではなく「見る側」なのかもしれない
ここからは空想工房研究室による考察である。
「問題」という言葉は便利だ。
理解できないものを分類できる。
しかし、
「問題」と名付けた瞬間、
私たちはその行為の意味を探すことをやめてしまうこともあるのではないだろうか。
この論文から見えてくるのは、
「その行為をどう変えるか」より先に、
「その行為をどう見るのか」を考える
という姿勢だ。
最終的な考察でも、支援者側の既存の価値観を疑い、本人にとってその行為がどのような意味を持つのかへ視点を転換することが重要な要素として整理されている。 design0233.pdf
本人をこちら側の「普通」へ近づけるだけではない。
こちら側もまた、
自分の普通を疑ってみる。
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研究員メモ
もちろん、
危険な行為を何でも放置すればいい
という話ではない。
論文でも、本人が安心できる環境をつくることや、健康・安全へ配慮しながら本人のこだわりを十分に発揮できる環境をつくることが支援者に求められている。 design0233.pdf
安全は守る。
しかし、
「危険だから止める」ことと、
「理解できないから止める」ことは別物だ。
ならば、
すぐに矯正する前に、
見る。
待つ。
考える。
そして、ちょっと面白がってみる。
そんな余白があってもいいのではないだろうか。
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観測結果
奇妙な行為は、奇妙なままでいいのかもしれない。
あの世界的超有名作品、**『ジョジョの奇妙な冒険』**でさえ、奇妙な冒険へ立ち向かうのだ。
ならば我々も、奇妙さを恐れている場合ではない。
続け、戦士たちよ。
わたしのしかばねを超えてゆけ。
――キリッ。
⸻
今回観測した論文
村谷つかさ
『障がいのある人の創作活動の指標に関する研究』
九州大学に提出された、博士(芸術工学)の課程博士論文。
障がいのある人の創作活動を、作品の美術的・経済的価値だけではなく、創作過程、本人と支援者の関係、そして社会との関係から捉えようとした研究です。 design0233.pdf
全284ページ。
研究室は今後も、この巨大論文から妙に光っている箇所を発掘する予定である。
――観測継続。